2012年5月17日木曜日

憲法施行65周年にあたって(2)


皆が…ではアカンのや

鳳南町・谷本好美

私が中学2年の昭和32 (1957) 年、担任から聞いた話が、いまでもしっかり耳に残っています。「多数決で決めるという事は少数意見を無視することではありません」、「たくさんの人が言うから正しいとは限らない」、「少数意見もよく聞いた上で、しっかり考えて決めることが大切」だとして、ご自分の体験をリアルに語ってくれました。

「昭和20 (1945) 年7月、堺大空襲があってね。雨あられのように落ちてくる焼夷弾で私が住んでいた遊郭のある竜神町も火の海になったんや。日本の家は木と紙で出来ているからよく燃えるやろ! あっという間に火は広がっていき、恐ろしいから、まだ燃えていない方へ誰も逃げたくなるんや。お母さんが布団を貯水槽の水にザブンとつけて、『これを被って逃げるんや! 怖かっても燃えてるところを突っ切るんやで!』と走り出した。

「続々逃げてくる人と反対に走ってるわけやから、間違ってるんやないか! の不安と火の中を突っ切る怖さとで頭は混乱してたけど、『燃えてしまったらもう燃えるものはない』というお母さんの言葉は正しいと信じて必死に走った。遊郭の土塀の中で蒸し焼きになった人、土居川に入ったまま亡くなった人、それよりも風下に逃げ火の速さに勝てず亡くなったたくさんの人を見て、戦争の恐ろしさと、『皆が行くから自分も行くではアカンのや、それが正しいとは限らんのや!』ということを、中学生だったけどその時実感したんやで。」

先生は、ご自分の体験を話し、民主教育をしてくれていたんだと、いまでも記憶しています。

『憲法九条だより』No. 17(2012年5月10日)から