2012年8月21日火曜日

うつ蟬の宿

詩:浅井千代子(本会世話人)


去年の夏の終り
おりづる蘭の大きな鉢植を
うつ蟬の宿と名づけ
辺りに落ちている蟬殻を集め
しつらえたサツキの枝に留まらせた
一つの生命を旅立たせ
夏の終りの
満足しきった蟬殻の表情

只今常住二十数個
今年又土深く
新しい蟬の生命が
育っている

『異郷』第21号(2012年7月)から
写真・多幡達夫