2012年12月3日月曜日

「国防軍創設の危うさ 自民の衆院選公約 識者ら懸念隠せず」東京新聞


 自民党が衆院選公約で国防軍を創設するとしていることについて、『東京新聞』は11月30日付けで表記題名の記事を掲載しました(こちらでも読めます)。記事は、憲法に戦力を持たないとある一方、武力としての自衛隊が存在するという長年の「混乱」を解決するためという公約について、日本が戦後守ってきた平和主義をねじ曲げる危険はないのかとの見地から、識者らの意見を聞き、おおむね以下のように伝えています。

 有識者の不安は、国防軍が自衛隊以上に巨大な存在にならないかという部分に集中しています。自衛隊は憲法との整合性に配慮して、「自衛のための必要最小限の実力」しか持つことができませんでした。しかし、憲法を改正し、国防軍を大手を振って保持することになれば、こうした歯止めが弱くなるのではないかということです。

 自民党の公約は、他国が武力攻撃を受けた場合、共同して防衛に当たる集団的自衛権の行使を可能にすることも明記しています。国防軍保持と集団的自衛権の行使が可能になった場合、日本の国防軍が海外で武力を行使することも否定できません。名古屋学院大の飯島滋明准教授(憲法平和学)は「国際平和、国際協調に違反する行為につながりかねない」と危惧しています。

 「九条の会」の奥平康弘・東京大名誉教授(憲法)は「自衛軍ならば自衛隊の延長で、現行憲法の専守防衛の概念が残る。国防軍としているのは国家を守るという意識を前面に出し、幅広い軍事行動を取れる特別な意味を込めているのではないか」と分析しています。同会事務局長で国文学者の小森陽一氏は「国防という言葉のイメージは自衛よりも好戦的。尖閣諸島問題で中国との緊張関係が高まる中、愛国心をあおる狙いがあるのではないか」と批判しています。

 国防軍保持に対して、中国と韓国はすでに反発しています。外交評論家の天木直人氏は「同盟国の米国にさえ、日本の軍国主義の復活には警戒がある」といっています。

 憲法改正の発議には衆参両院で3分の2以上が必要ですが、衆院選の結果次第では、自民党、日本維新の会、民主党の一部など改憲勢力がまとまった場合には、必ずしも不可能な数字ではありません。「こうした時代には威勢のいい改憲派の言葉が魅力的に響くが、それでいいのか。有権者は冷静に考えてほしい」と、小森氏は語っています。

 ——私たちは小森氏のこの言葉を、真剣に受け止めなければなりません。

多幡記