2013年3月23日土曜日

「いつの間にか始まっている」戦争こそが恐ろしい:赤川次郎氏

 赤川次郎さんが『図書』誌に連載しているエッセイ「三毛猫ホームズの遠眼鏡」は、3月号で第9回となりました。今回の題は「灯台はどこを照らすのか」です。先般、NHK の「クローズアップ現代」(注 1)で、「木下恵介の映画が、いま、世界で注目され、また現代の日本の若い世代に共感を持って見られていることが報告されていた」と始まっています。

 そして、「木下恵介の原点は、『戦争』、『貧困』、そして『封建的な因習』への怒りである」、「灯台守夫婦の歳月を描いた『喜びも悲しみも幾歳月』にも、戦時下、アメリカ軍の標的となって攻撃を受け、何人もの灯台守が犠牲になったことが描かれている」と述べています。

 赤川さんは続いて、尖閣問題で硬直化した安倍政権の姿勢に関連して、「初めは、戦争とも戦闘とも呼べない小ぜり合いが、やがて、犠牲者を出し、その報復を叫んで攻撃し、という風に、『いつの間にか始まっている』戦争こそが恐ろしいのだ」と警告し、「私たち一人一人が、『戦争をしない』という意志を強く持つしかない」と訴えています。まさに、私たち一人一人が、憲法9条を守りいかす決意を新たにしなければならない、ということです。

 赤川さんはさらに、「戦争」だけでなく「貧困」も目の前の問題であるとして、「今、木下作品を見る人は、どんな涙であれ、この社会と深くつながっていることを忘れないでほしい」と望んでいます。

 木下恵介の映画という灯台が、領土問題をめぐる戦争への危険や、生活保護費の不当な切り下げによる貧困の加速などの、現在の状況をも照らしていることに、私たちは気づき、そういう状況の改善を求めて行かなければなりません。


  1. 赤川さんの文の末尾に、「映画用語としては『クローズ』と濁らず、『クロースアップ』が正しい、のだそうである」とあり、私も辞書を引いてみたところ、そうだと分りました。

多幡記

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