2013年12月6日金曜日

秘密保護法案可決を強行すれば世界へ恥をさらす


 2013年11月3日付け朝日新聞の「声」欄に、「条約に違反の秘密保護法案」と題して、弁護士・熊野勝之さんの投書が掲載されました(こちらでご覧になれます)。熊野さんのいう条約とは、1979年に日本政府が批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」で、この条約は、全ての人が「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由」(19条2項)を権利として保障しているもので、締約国にはこの条約を守る義務があります。

 熊野さんはこの条約について、締約国が権利を制限する場合、その制限は法律によって定め、かつ、他者の権利の尊重、国の安全の保護などに必要とされるものに限ると定めていること、さらに「法律は、制限の実施にあたる者に対して自由裁量を与えるものであってはならない」「十分な指針を定めていなければならない」という解釈基準も示していることを説明しています。

 他方、特定秘密保護法案には知る権利や取材の自由への配慮が盛り込まれたものの、「配慮」は権利の保障ではないこと、また、法案では内閣が承認すれば30年を超えても秘密は開示されないまま闇に葬られるとか、秘密の指定は行政機関の長が行うと定めるだけで指定基準を法律で定めていないなど、制限の実施者に自由裁量を与えるものであることを熊野さんは指摘し、法案は上記の国際規約に違反するものであると主張しています。

 熊野さんは、法案が強引に採決され衆議院を通過したあとの2013年11月28日付け「声」欄でも、「秘密法案 世界の流れに逆行」と題する投書(こちらでご覧になれます)で、国連人権理事会が任命している人権に関する専門家が、「内部告発者や秘密を報じる報道関係者にとって深刻な脅威を含んでいる」との声明を発表したこと、また、今年6月にできた「ツワネ原則」という、知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際指針に照らしても、その基準に明らかに反していることを述べています。そして、国連の特別報告者が、一国の法案審理の段階でこれだけ強い懸念を表明し問いを投げかけるのは異例の事態であると警告しています。

 このように国際規約違反、国際基準違反を犯している法律を、得々として成立させようとする安倍政権の政策は、日本の恥を世界にさらそうとしていることに他なりません。

 熊野さんの最初の投書の末尾には、「法案が成立しても、公務員やジャーナリスト、市民の逮捕、起訴は憲法31条(法定の手続きの保障)違反[引用者注:この場合は、国際条約の締約国に課せられている、条約を守る義務への違反でしょう]で、無罪となるだろう」とあります。この言葉は、法案が可決されても、裁判を要することになる恐れはあるものの、公務員やジャーナリストや市民が知り伝える権利の発揮に少しも臆病になる必要がないことを示すものであり、私たちが今後とも、これらの権利を守るたたかいを進めるための勇気を与えてくれるではありませんか。

多幡記

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